株で失敗しないために、決算書の「現金」の動きに注目しよう。
キャッシュフローって何?小学生でもわかるたとえ話
突然ですが、こんな子どもを想像してください。
毎月のお小遣いは3,000円。でも友達に貸したお金がなかなか返ってこないので、手元には500円しかない。お菓子を買いたくても買えない。
この子の「収入」は3,000円ですが、「手元の現金」は500円です。
企業も同じです。利益が出ていても、実際に手元に現金がなければ、仕入れもできないし、社員に給料も払えません。最悪の場合、黒字なのに倒産する「黒字倒産」が起きます。
キャッシュフローとは、この「実際の現金の流れ」のことです。利益という数字ではなく、現金が実際にどれだけ入ってきて、どれだけ出ていったかを示します。
キャッシュフロー計算書の3つの区分
キャッシュフロー計算書は、現金の流れを3つに分けて記録しています。
① 営業キャッシュフロー
本業で稼いだ現金の流れです。商品を売って現金が入ってきた、仕入れで現金が出ていった、といった本業に関わるお金の動きをすべてまとめたものです。
ここがプラスであることが、まず最初に確認すべきポイントです。本業でしっかり現金を生み出せているかどうかがわかります。
たとえ話でいうと、お父さんが会社で働いてもらってくる「給料」にあたります。
② 投資キャッシュフロー
設備投資や資産の売買による現金の流れです。新しい工場を建てた、土地を売った、子会社を買収した、といったお金の動きです。
成長中の企業は積極的に投資をするため、投資キャッシュフローはマイナスになることが多いです。マイナスだから悪い、というわけではありません。
たとえ話でいうと、お父さんが将来のために家を買ったり、株を買ったりするお金の動きです。
③ 財務キャッシュフロー
借入や返済、増資、配当金の支払いなど、資金調達に関わる現金の流れです。
銀行からお金を借りればプラス、返済すればマイナスになります。配当金を支払うとマイナスになります。
3つの組み合わせで企業の状態がわかる
3つのキャッシュフローの「プラス・マイナス」の組み合わせを見ると、企業がどんな状態にあるかがひと目でわかります。
営業キャッシュフロー:プラス
投資キャッシュフロー:マイナス
財務キャッシュフロー:マイナス
これが「優良企業の典型パターン」です。本業でしっかり稼ぎ、成長のために投資し、借入を返済しながら配当も出している状態です。トヨタ自動車や花王など、長期にわたって安定している企業はこのパターンに近い動きを続けることが多いです。
営業キャッシュフロー:マイナス
投資キャッシュフロー:マイナス
財務キャッシュフロー:プラス
これは「要注意パターン」です。本業で現金を生み出せておらず、借入で穴埋めしている状態です。スタートアップ期の企業なら一時的に起こりうることですが、成熟した企業でこのパターンが続く場合は危険信号です。
フリーキャッシュフローに注目しよう
投資家がよく使う指標に「フリーキャッシュフロー(FCF)」があります。
計算式:フリーキャッシュフロー = 営業キャッシュフロー – 設備投資額
本業で稼いだ現金から、事業を維持するための設備投資を引いた残りが、会社が自由に使えるお金です。配当を増やす、自社株買いをする、新しい事業に投資する、借金を返す、こういった選択肢に使えます。
フリーキャッシュフローが継続的にプラスの企業は、財務的な体力があり、株主への還元や成長投資を自力でまかなえる状態にあります。
実際の数字で見てみよう
では、実際の企業のキャッシュフローを見てみましょう。ここでは花王を例に挙げます。花王は日用品メーカーとして長年にわたって安定した業績を続けており、キャッシュフロー分析の教材としてわかりやすい企業の一つです。
花王の2023年12月期のキャッシュフロー(連結・概算)は以下のような内容でした。
営業キャッシュフロー:約1,800億円(プラス)
投資キャッシュフロー:約マイナス800億円
フリーキャッシュフロー:約1,000億円
本業でしっかり現金を稼ぎ、設備投資を差し引いても約1,000億円の自由なお金が残っています。花王は33年以上連続で増配を続けていますが、その裏側にはこうした安定したキャッシュ創出力があります。
※数値は概算です。最新の正確な数値は花王の公式IRページでご確認ください。
利益とキャッシュフローがズレるのはなぜ?
「利益が出ているのにキャッシュフローが少ない」という現象はよく起こります。その主な原因は以下のとおりです。
売掛金の増加:商品を売っても、代金がまだ回収されていない場合、利益は計上されますが現金は入ってきません。売上が急増している成長企業に起きやすい現象です。
在庫の増加:仕入れを増やして在庫を積み上げると、現金は出ていきますが利益には影響しません。在庫が増えているのにキャッシュフローが減っている場合は注意が必要です。
減価償却:設備投資は一度に費用として計上せず、数年にわたって少しずつ費用化します。この「減価償却費」は現金の支出を伴わない費用なので、利益よりキャッシュフローが多くなる要因になります。
逆に言えば、営業利益は低いのに営業キャッシュフローが大きい企業は、実態としては稼ぐ力が高い可能性があります。減価償却費が大きい製造業や通信会社などに多いパターンです。
キャッシュフローで「粉飾」を見抜くヒントにもなる
利益は経営者の判断によってある程度操作できます。売上の計上タイミングをずらしたり、費用の見積もりを変えたりすることで、利益の数字は変えられます。
しかし、現金の流れはごまかしにくいです。「利益は毎年増えているのに、営業キャッシュフローが何年もマイナスのまま」という状態は、利益の質に疑問符がつきます。決算書の数字をそのまま信じるのではなく、キャッシュフローと照らし合わせる習慣をつけると、財務分析の精度がぐっと上がります。
キャッシュフローをどこで調べるか
株探(kabutan.jp)
各銘柄のページに「キャッシュフロー」の推移グラフが掲載されています。過去数年分の営業・投資・財務キャッシュフローをひと目で確認できます。
バフェット・コード
営業キャッシュフローやフリーキャッシュフローの推移を折れ線グラフで視覚的に確認できます。数字が苦手な方でも傾向をつかみやすいです。
各社のIRページ・決算短信
最も正確な一次情報です。決算短信の末尾にキャッシュフロー計算書が掲載されています。
まとめ
キャッシュフローは、企業の「本当の体力」を見るための指標です。利益という数字だけでは見えない、実際の現金の流れを確認することで、銘柄選びの精度が高まります。
まず確認すべきポイントをまとめると、以下のとおりです。
・営業キャッシュフローがプラスか
・フリーキャッシュフローがプラスか
・営業キャッシュフローと利益の数字に大きなズレがないか
・3つのキャッシュフローの組み合わせパターンはどれか
ファンダメンタルズ分析の基本についてはこちらの記事も参考にしてみてください。
ファンダメンタルズ分析とは?銘柄選びで見るべき指標を初心者向けに解説
証券会社選びで迷っている方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
※本記事は個人の見解にもとづく情報提供を目的としています。投資には元本割れのリスクがあります。投資の判断はご自身でお願いします。掲載している数値・制度内容は執筆時点の情報です。最新情報は金融庁・各証券会社の公式サイトでご確認ください。
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