「iDeCoってよく聞くけど、結局なんなの?」
投資や年金の話題でよく出てくるiDeCoですが、仕組みがよくわからないまま放置している人も多いと思います。
結論から言うと、iDeCoは個人事業主・フリーランスにとって特に節税効果が大きい制度です。うまく活用すれば、老後の資産を積み上げながら毎年の税金を減らすことができます。
この記事では、iDeCoの仕組みをゼロからわかりやすく解説したうえで、個人事業主ならではのメリットを詳しく紹介します。
iDeCoとは?
iDeCo(イデコ)は「個人型確定拠出年金」の愛称です。
むずかしい正式名称はさておき、一言で言うと「自分で積み立てて、自分で運用する、老後のための年金制度」です。
国が作った制度で、毎月一定のお金(掛金)を積み立てながら運用していきます。積み立てたお金は原則60歳以降に受け取れます。
iDeCoって株なの?何を買うの?
「iDeCoって株を買うの?」と思う人もいるかもしれませんが、iDeCo自体は「制度の名前」であって、株や投資信託とは別のものです。
イメージとしては「iDeCoという専用の箱を用意して、その中に金融商品を入れて運用する」という感じです。箱の中に何を入れるかは自分で選びます。
選べる商品は2種類
iDeCoで選べる商品は大きく2種類です。
ひとつ目は「定期預金」です。銀行に預けるのと似ていて、元本が保証されています。損することはありませんが、利息はほぼゼロに近いです。
ふたつ目は「投資信託」です。投資信託とは、たくさんの人からお金を集めて、プロがまとめて株や債券に投資してくれる商品です。たとえば「世界中の優良企業数百社の株をまとめて少しずつ買う」ような商品があります。元本の保証はありませんが、長い目で見るとリターンが期待できます。
iDeCoで積み立てる期間は数十年にわたることが多いため、長期運用に向いている投資信託を選ぶ人がほとんどです。「どれを選べばいいかわからない」という場合は、世界中の株に幅広く分散投資するタイプ(全世界株式型)がシンプルでわかりやすく、よく選ばれています。
個別株やETFは買えるの?
iDeCoでは個別株(特定の会社の株)は買えません。ETF(日経平均などに連動する投資商品)も基本的に購入できません。選べるのは定期預金と投資信託のみです。
「トヨタの株をiDeCoで買いたい」「日経平均連動のETFをiDeCoに入れたい」というのはできないと覚えておきましょう。
結局、儲けはどこから出るの?
iDeCoで「儲かる」仕組みをシンプルに説明します。
たとえば毎月1万円を投資信託で積み立てたとします。30年間積み立てると、元手の合計は360万円です。この360万円が運用によって増えて、仮に600万円になったとすると、差額の240万円が「運用益」——つまり儲けです。
ただし運用なので、必ずしも増えるとは限りません。投資信託の価格が下がれば、元手を下回ることもあります。長期間積み立てることでリスクを分散させるのがiDeCoの基本的な使い方です。
通常、この運用益には約20%の税金がかかります。しかしiDeCoの口座内で得た運用益は非課税です。増えた240万円がそのまま手元に残る、というのがiDeCoの大きなメリットのひとつです。
配当金は出るの?
株のように配当金が口座に振り込まれることはありません。iDeCoの口座内で出た利益や分配金は、自動的に再投資されます。現金として受け取ることはできません。
運用益がそのまま積み上がっていく仕組みなので、長く運用するほど雪だるま式に増えていくイメージです。
積み立てたお金はいつ受け取れるの?
iDeCoの積み立ては原則60歳まで引き出せません。途中で急にお金が必要になっても使えないのが最大の注意点です。その代わり、受け取るときに大きな税制優遇があります。
60歳から75歳の間に受け取りを開始できる
iDeCoの受け取りは60歳から75歳の間に、自分でタイミングを決められます。ただし、加入期間が10年未満の場合は60歳から受け取れないケースもあります。早めに加入しておくのが得策です。
受け取り方は3種類
受け取り方は主に3種類あります。
まず「一括で受け取る(一時金)」方法です。積み立てた資産を全部まとめて受け取ります。このとき「退職所得控除」というルールが使えます。
退職所得控除とは、受け取った金額から一定額を差し引いてから税金を計算してくれる仕組みです。たとえば30年間加入していた場合の控除額は1,500万円です。つまり受け取った金額が1,500万円以下なら、税金がかからない可能性があります。個人事業主には会社からの退職金がないため、この控除枠をまるごとiDeCoに使えます。
次に「分割して受け取る(年金)」方法です。5年以上20年以内の期間で、毎月または毎年少しずつ受け取ります。このとき「公的年金等控除」というルールが使えます。65歳以上であれば年間110万円まで税金がかかりません。毎月の生活費の足しにしながら、税負担を抑えて受け取れる方法です。
3つ目は「一括と分割の組み合わせ」で、一部をまとめて受け取り、残りを分割で受け取ることもできます。
どの方法が得かは、受け取り時点での収入や家族構成によって変わります。受け取り時期が近づいたら税理士に相談しながら決めるのがおすすめです。
60歳を過ぎても運用を続けられる
受け取りを開始するまでは運用を続けられます。まだ働いている間は受け取りを遅らせて、資産をさらに増やすという使い方もできます。
iDeCoの3つの税制優遇
iDeCoには税金が優遇されるポイントが3段階あります。ここがiDeCoの一番のメリットです。
優遇① 積み立てた掛金がそのまま節税になる
iDeCoに積み立てたお金は、全額が所得控除の対象になります。所得控除とは「課税される収入を減らせる仕組み」のことです。課税される収入が減れば、払う税金も減ります。
たとえば月2万円を積み立てると、年間24万円が課税される収入から差し引かれます。所得税率が20%の人なら所得税が年間約4.8万円減り、住民税(10%)の分も合わせると年間約7.2万円の節税になります。
積み立てるだけで毎年確実に税金が減る——これはNISAにはないiDeCo独自のメリットです。
優遇② 運用中の利益に税金がかからない
通常、株や投資信託で利益が出ると約20%の税金がかかります。iDeCoの口座内で得た利益は非課税です。運用益がそのまま次の投資に回せるため、長く運用するほど有利になります。
優遇③ 受け取るときも税金が抑えられる
前の章で説明した通り、受け取るときも「退職所得控除」や「公的年金等控除」によって税負担を抑えられます。積み立てるとき・運用中・受け取るときと、3段階すべてで税金が優遇される制度はiDeCoだけです。
個人事業主がiDeCoをやるべき理由
iDeCoは誰でも使えますが、個人事業主・フリーランスには特別に大きなメリットがあります。
理由① 掛金の上限が会社員の約3倍
iDeCoの掛金上限は職業によって異なります。
| 職業 | 月額上限 | 年額上限 |
|---|---|---|
| 個人事業主・フリーランス | 6.8万円 | 81.6万円 |
| 会社員(企業年金なし) | 2.3万円 | 27.6万円 |
| 公務員 | 1.2万円 | 14.4万円 |
個人事業主は月6.8万円、年間81.6万円まで積み立てられます。会社員の約3倍です。積み立て額が多いほど節税効果も大きくなります。
なお2027年1月からは上限が月7.5万円(年間90万円)に引き上げられる予定です。ただし国民年金基金や付加保険料と合算して上限が決まるため、両方に加入している方は注意が必要です。
理由② 退職金の代わりになる
会社員には退職金制度がある会社も多いですが、個人事業主には退職金がありません。iDeCoを「自分で作る退職金」として活用できます。前述の通り、加入年数が長いほど受け取り時の控除額が大きくなるため、早く始めるほど有利です。
理由③ 国民年金だけでは老後が心もとない
個人事業主が受け取れる公的年金は「国民年金」のみです。会社員は国民年金に加えて「厚生年金」も受け取れますが、個人事業主にはその上乗せがありません。2024年度の国民年金の月額は満額で約6.8万円です。これだけで老後の生活をまかなうのはむずかしく、自分で備える必要があります。iDeCoはそのための有力な手段です。
理由④ 確定申告でそのまま節税できる
会社員は年末調整でiDeCoの節税効果を受けますが、個人事業主は確定申告で受けます。毎年確定申告をしている個人事業主にとって、手続きは難しくありません。毎年10〜11月ごろに届く「小規模企業共済等掛金払込証明書」を確定申告書に添付するだけです。
iDeCoのデメリット・注意点
原則60歳まで引き出せない
最大の注意点は、積み立てたお金を原則60歳まで引き出せないことです。急にお金が必要になっても使えません。生活防衛資金をしっかり確保したうえで、余裕のある金額で始めることが大前提です。収入が不安定になりやすいフリーランスは特に慎重に考えましょう。
口座管理手数料がかかる
加入時に2,829円(初回のみ)、毎月の口座管理手数料が最低でも171円かかります。証券会社によってはこの手数料が無料のところもあります。
掛金の変更に時間がかかる
掛金は年1回変更できますが、変更が反映されるまで数か月かかります。収入が急に減ってもすぐ対応できないため、最初から無理のない金額に設定しておくことが大切です。
いくらから始めればいい?
iDeCoは月5,000円から、1,000円単位で設定できます。最初は少なめに設定して、余裕が出てきたら増やすやり方でも問題ありません。ただし掛金が多いほど節税効果は高くなります。毎月払い続けられる金額を無理なく設定しましょう。
iDeCoとNISA、何が違うの?
iDeCoとNISAはどちらも税制優遇のある資産形成の制度です。混同されやすいですが、仕組みは大きく異なります。
| iDeCo | NISA | |
|---|---|---|
| 積み立てた掛金の節税 | あり(全額所得控除) | なし |
| 運用益の非課税 | あり | あり |
| 引き出し | 原則60歳まで不可 | いつでも可能 |
| 年間上限(個人事業主) | 81.6万円 | 360万円 |
| 買える商品 | 定期預金・投資信託のみ | 投資信託・ETF・個別株など |
最大の違いは「積み立てた掛金が節税になるかどうか」です。NISAは利益が出て初めて節税効果を感じる制度ですが、iDeCoは積み立てた瞬間から節税効果が発生します。
たとえば所得税率20%・住民税10%の個人事業主が月3万円をiDeCoに積み立てると、税金が年間約10.8万円減ります。これはNISAにはない強みです。
ただしiDeCoには「60歳まで引き出せない」制約があります。NISAはいつでも引き出せるため、老後以外の目的にも使えます。
個人事業主の場合、まずiDeCoを上限まで活用したうえで、余裕があればNISAも活用するという順番が合理的です。
まとめ
- iDeCoは「自分で積み立てて運用する老後のための年金制度」
- 積み立てた掛金が全額節税になり、運用益も非課税、受け取り時にも税優遇がある
- 個人事業主の掛金上限は月6.8万円で会社員の約3倍、節税効果も大きい
- 退職金がない・厚生年金がない個人事業主にとって老後資金準備の有力な手段
- 原則60歳まで引き出せないため、生活防衛資金を確保してから始めることが大前提
- 月5,000円から始められ、掛金は年1回変更できる
証券会社選びで迷っている方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
※本記事は情報提供を目的としたものです。税務上の判断は個人の状況によって異なります。詳細は税務署または税理士にご相談ください。また、投資には元本割れのリスクがあります。投資の判断はご自身でお願いします。掲載している数値・制度内容は執筆時点の情報です。最新情報は国税庁・金融庁の公式サイトでご確認ください。
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