サンクコストの錯覚とは?意外とみんな騙されている日常の実例
「サンクコスト」は経済学で使われる言葉です。心理学ではコンコルド効果といいます。
サンクコストを知ることにより、いかに自分が損をしているのかがわかったりします。
実は、商売の世界でもサンクコストでユーザーに錯覚を起こさせ、お金を使わせる手法があります。
実例を踏まえて詳しく紹介します。
目次
サンクコスト・コンコルド効果とは
サンクコストとは、日本語で埋没費用(まいぼつひよう)と言います。
埋没とは、「うずまって外に現れない」という意味です。つまり、「もう取り戻せない費用」がサンクコストの意味です。
この取り戻せないはずの費用を「もったいない」と思い、「使った分の元を取りたい」と考えてしまう心理があります。これが、サンクコストの錯覚、または、心理学用語でコンコルド効果、コンコルド錯覚、コンコルドの誤謬(ごびゅう)といいます。
サンクコストの錯覚は、経済学や経営などでよく使われます。
事業に資金を投下しても、失敗が確定されてしまった際、潔く損切りできるのか、それとも最後まで粘るべきかなどのシーンがありますが、もし最後まで粘ったとしても最大限の利益を得るケースはほぼありません。
なので本来は潔く損切りすべきなのです。しかし、損切りすれば、投下した資金は返って来ませんよね。これが埋没した費用。つまり、サンクコストなのです。
そして、最後まで粘ればなんとかなるんじゃないかと錯覚する心理がサンクコストの錯覚なのです。
サンクコストの錯覚の実例
具体的な実例を出したほうがわかりやすいと思いますので、いくつか紹介します。
「せっかくお金を支払ったのだからつまらない映画でも観続ける」とか、Wikipediaにも載っているようなありきたりな実例はおもしろくないので、この記事では商売人目線でうまくサンクコストの錯覚を活用できる実例を紹介します。
もちろん、消費者目線で見ても、騙せれないように気をつけようと思えるので参考になる実例かと思います。
実例1:有料のポイントカード
私は先日イオンシネマに映画を観に行きました。ポイントカードを作れば、6回映画鑑賞をすると、1回タダになるらしいという情報で、ポイントカードを作りに窓口へと向かいました。
窓口で、ポイントカードを作りたい旨伝えると、「200円になります」と言われ、一瞬迷いましたが200円程度で断るのもなんだかカッコ悪いのでそのまま作ることにしました。
その時私はこう思いました。
「200円も払ったんだから、元を取るために有効期限内(半年以内)に6回映画を観なきゃ…」
これがサンクコストの錯覚です。
映画は安い日に行けば1回1,100円ですが、6回観るのに最低6,600円かかります。ポイントカードに200円払って今回1,100円で映画を観て、さらに今後半年以内に最低5,500円支払い、やっと1回無料です。
もしこのポイントカードが無料だった場合、私は多分半年以内にポイントをためきることができないでしょう。しかし、200円という絶妙な金額でポイントカードを作ることにより、見事に映画館の術中にハマってしまうのでした。
このように、イオンシネマは絶妙に計算された金額でポイントカードを提供したことにより、顧客のリピート率を上げています。(100円だったらリピートしない可能性が高いし、300円だったらそもそもポイントカードを作らないかもしれない)
実例2:コストコの会費
コストコとは本社がアメリカにある倉庫形式の大型スーパーです。コストコの商品は非常に安く、普通のスーパーで買うより1~2割安いのが当たり前です。
コストコの安さの秘密をざっくり言うと、倉庫に商品を仕入れ、そのまま販売しているので物流コストがかからないため安く提供できています。
しかし、日本のスーパーではありえないですが、コストコで商品を買うには会員になり「年会費」を支払わなければなりません。
個人年会費が4,400円(税込4,752円)です。月で割れば1ヶ月あたり税込396円なのでそれほど高くないのですが、これは心理的に結構大きいです。
それでもやっぱりコストコの商品は安いので、年会費を支払いコストコで商品を購入すれば元が取れます。
しかし、それがコストコの狙いです。
年会費の元を取りたいがために、顧客は必要以上に商品を購入します。商品自体も1つ1つが大きいので、大量にまとめ買いする人が多いです。
別に必要な分を購入するだけであれば消費者は損をしませんが、年会費というサンクコストの錯覚をうまく利用した営業形態と言えます。
ただ、中には必要以上に買いすぎてしまい、結局誰かにおすそ分けしたり、捨てたりしてしまう人もいるはずです。
実例3:5,000円以上送料無料!
ネットショッピングでよくあります。一定の金額以上買えば送料が無料になると言われると、特に今欲しいものはないけど、何か買おうかなと思ってしまいます。
これは先の2例と違い、順番が逆なので気づきにくいかもしれません。
ここでいう送料がサンクコストです。もし、一定の金額未満であればサンクコストを支払うことになるので、いらないものでも買わせてしまう商売方法です。
つまり、送料というサンクコストを損だと錯覚し、余計なものを買ってしまうのです。本当の損は余計なものにお金を使うことです。
実例4:大手スーツチェーン店の2着目1,000円
ネットショッピングの送料無料と少し似た例です。
スーツの大手チェーン店では、1着39,000円以上のスーツを買うと、2着目が1,000円で買えます。
これまた39,000円も微妙な金額で、4万円くらいのちょうどいいスーツがなくて、34,000円の次に高いのが49,000円だったりします。
すると、本来34,000円のスーツでいいはずだったのに、2着目1,000円を利用するために、15,000円も高い49,000円のスーツを購入してしまうわけです。
そして、さらにいらないのに1,000円払って2着目のスーツも買うのです。
つまり、①「本来34,000円でよいのに49,000円のスーツを買う」、②「いらない2着目のスーツを1,000円で買う」とダブルで無駄な行為をしているのですが、それよりも「2着目を安く手に入れないことのほうが損だ」と錯覚しているので購入してしまうのです。
将来的な損を先取りして、錯覚に陥っています。これがサンクコストの錯覚と言えるかは微妙なところではありますが、心理作用としては同じ働きです。
もし、ほんとうは2着もいらない場合、結局16,000円無駄に支払ったことになるのですが、サンクコストの錯覚にうまく隠れて気づきにくくなっています。
サンクコストに錯覚しないようにしよう(まとめ)
いかがでしたか?
サンクコストの錯覚とは、もう取り戻せない費用なのに、取り戻せると錯覚してしまうことを言います。
日常の経済活動にはありとあらゆるサンクコストの錯覚が紛れています。
普段自分が支払っているお金が、「もしかしたらサンクコストで錯覚しているのでは?」と考えてみると意外と騙されていることに気づくかもしれませんね。
反対に、商売をする側は、こういった人間の心理をうまく突いて儲けることができるので参考にしてください。
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