東大生は親に「勉強しなさい」と言われたことが無い人が多いのはなぜか?
東大生って自ら勉強が好きでやる人が多いんですよ。親から「勉強しなさい」って言われて東大まで行った人なんてほとんどいません。
もし強制されて勉強し東大に行ったとしても、その後大学で全然勉強しなくなります。
別に東大とか関係なくても、「勉強しなさい」って言われたらなんだかやる気がなくなりますよね。これって科学的根拠があるんです。
この件に関して、興味深い研究結果があるので紹介します。
目次
脳に快感を与えるドーパミンの作用
研究結果の前に、ドーパミンの話をします。
人間の脳では、なにかしらの気持ちよさを感じているときにドーパミンが発生しています。脳内でドーパミンが放出されると人間は、快感を感じるようにできているのです。
永遠とレバーを押し続けるネズミ
1953年カナダのマギル大学でジェイムズ・オールズとピーター・ミルナーという2人の研究者がラットを使った実験を行いました。(ラットとはネズミの一種です)
ラットの脳に手術で電極を埋め込み、電流を流してラットの反応を見るというものです。彼らは容器にレバーを取り付け、ラットがレバーを押すと電極に電流が流れる仕組みを作りました。するとラットは猛烈な勢いで、1時間に7000回もレバーを押し続けたのです。
休む間もなく永遠と押し続けるものですから、そばにエサを置いてみました。しかし、見向きもせずレバーを押し続けます。さらに、レバーに近づくと足に電気ショックを与える「罰」を作ったのですが、ラットはレバーを押し続けることを止めませんでした。
これが脳が自分自身に報酬を与えるという仕組みの発見です。
その後人体実験も重ね、人間もラットと同じ反応をすることがわかりました。その脳に報酬を与えている物質が「ドーパミン」だったのです。
脳の報酬系をうまく利用し、やる気を上げる動悸付け
テストで100点を取るとうれしくなります。そのとき脳内でドーパミンが出て、脳が自分自身に報酬を与えています。
先ほどのラットの実験からもわかるように、ドーパミンには依存性があります。脳内でドーパミンが放出されると気持ちよくなり、気持ちよいという記憶が海馬に記録され、またそれを味わいたいと考えてしまうのです。
本来テストでいい成績をとればこのように脳が勝手に気持ちよくなり、自ら進んで勉強をするようになります。しかし、「動機付け」を間違うとこの作用が働かなくなります。
内発的動機と外発的動機
自己決定理論という有名な動機付けの理論があります。
動機には大きく分けて「内発的動機」と「外発的動機」があります。
内発的動機は「新しいことを覚えるのは楽しいから」、「1位を取ると優越感が得られるから」、「自分で決めたことを実行することで自己決定できる自由を感じるため」などです。これらは有能感、自律性、関係性という3つの欲求にかかわります。自ら何かを得たいからの動機ではなく、自然とやってしまうこのが内発的動機です。
外発的動機とは「親に怒られないため」、「志望校に合格するため」、「自分に価値がある勉強のため」などです。これらは他人や自分自身に強制させられた動機です。内発的動機に比べて目標がハッキリしている動機とも言えます。
やる気スイッチが入りやすい動機
外発的動機だと目標がハッキリしている分、目標を達成しない限りドーパミンが放出されません。志望校に合格すればドーパミンは大量に放出されますが、合格するまでドーパミンが出ないので勉強を続けることができないのです。
しかし、内発的動機で「勉強そのものが楽しい」という場合。勉強をして「わかる」ということ自体が楽しく、わかるたびにドーパミンが放出されます。そのため、ドーパミンの依存性により『勉強中毒』のような状態になり、「勉強しないと気持ち悪くて寝られない」と思い、勉強を続けられるのです。
外発的動機付けでも、「志望校に合格するため」はまだ救いがあります。内発的動機付けと組み合わせやすいと思います。
しかし、外発的動機付けで「親に怒られるため」というのは最悪です。自主性がなく、ドーパミンが放出される機会がありません。勉強を続けられるわけがありません。
動機付けと学力の研究結果
冒頭で触れた研究結果というものをお話しします。
小2~中3を対象にした大規模なアンケートと学力の関係のデータです。
勉強する理由に対するアンケートの回答
- 「勉強するのは楽しいから」「新しい発見があるから」・・・内発的動機
- 「悪い点取ると親から叱られるから」「いい点とると親から褒められるから」・・・外発的動機
これらの動機を踏まえて、4つのパターンに分けました
①内発的動機・外発的動機ともに高い群
②内発的動機・外発的動機ともに低い群
③内発的動機は高く、外発的動機が低い群
④内発的動機が低く、外発的動機が高い群
この中で一番学力が高かった順番に書きます。
③内発的動機は高く、外発的動機が低い群
①内発的動機・外発的動機ともに高い群
②内発的動機・外発的動機ともに低い群
④内発的動機が低く、外発的動機が高い群
③の内発的動機だけが高い群が一番学力が高く、④の外発的動機だけが高い群がビリだったのです。同じ内発的動機を持っていれば、外発的動機はマイナスにしかならないということです。
この結果からわかることは、「親からの勉強しろ!」という言葉は百害あって一利なし、むしろなにも言われないほうが成績が良くなるということがわかりました。
まとめ
この記事のタイトル『東大生は親に「勉強しなさい」と言われたことが無い人が多いのはなぜか?』ですが、「勉強しなさいと言われてこなかったがために勉強をたくさんしていた」よって日本一偏差値の高い東大にそういう人が集まっているということなのでしょう。
この記事を書くにあたり参考になった書籍
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