松井証券と楽天証券、どちらも人気のネット証券ですが、手数料の仕組みはまったく異なります。一見すると「楽天証券のゼロコースなら手数料が無料で絶対お得」と思いがちですが、仕組みをよく見ると単純な比較では済まない部分があります。
この記事では両社の手数料の仕組みを整理したうえで、それぞれの特徴をわかりやすく解説します。
松井証券の手数料:ボックスレート
松井証券は「ボックスレート」という1日定額制の手数料体系を採用しています。現物取引・信用取引・PTS取引すべてを合算した1日の約定代金合計によって手数料が決まり、何回取引しても金額は変わりません。
1日の約定代金合計が50万円以下なら手数料は0円です。50万円を超えると以下のように段階的に増えます。
50万円以下:0円
50万円超〜100万円以下:1,100円
100万円超〜200万円以下:2,200円
200万円超〜300万円以下:3,300円
以降100万円増えるごとに1,100円加算、上限110,000円
注文は東証に直接送られる通常の取引です。東証の板(注文状況)がそのまま反映されるため、自分が指定した板に対して素直に注文を出せます。
楽天証券の手数料:ゼロコース(Rクロス®)
楽天証券のゼロコースは、国内株式の売買手数料が約定代金にかかわらず完全無料です。ただしゼロコースを利用するには、SOR(スマート・オーダー・ルーティング)およびRクロス®の利用に同意することが必須条件となっています。
Rクロス®とは楽天証券が提供する独自のマッチングシステムで、楽天証券の利用者同士の売買注文を社内でマッチングさせる仕組みです。注文はまず楽天証券のシステムを経由してから市場に送られます。楽天証券はこの仕組みによって取引執行コストを削減し、手数料無料を実現しています。
楽天証券の公式説明では「東証の最良気配価格と同値、または有利な価格で約定する」としており、基本的には投資家にとって不利な価格で約定することはないとしています。ただし注文が東証に直接送られるわけではなく、Rクロス®のシステムを経由する点は理解しておく必要があります。
また、Rクロス®は楽天証券の利用者同士の注文をマッチングする仕組みのため、出来高が極端に少ない銘柄や楽天証券内での売買が少ない銘柄では、社内でマッチングできずに約定しにくくなる可能性も考えられます。メジャーな銘柄であれば問題になることは少ないと思いますが、小型株や出来高の少ない銘柄を中心に取引する場合は念頭に置いておくとよいでしょう。
なお楽天証券にはゼロコース以外に、通常通り東証に直接注文を出せる「超割コース」も残っています。ゼロコースと超割コースはいつでも切り替えが可能なので、普段はゼロコースで手数料無料の恩恵を受けつつ、約定にこだわりたい銘柄のときだけ超割コースに切り替えるという使い分けもできます。この柔軟さを考えると、楽天証券はどんな投資スタイルにも対応しやすい証券会社といえます。
また、ゼロコースでは信用取引の買方金利・貸株料が通常の超割コースより高めに設定されている点も知っておく必要があります。
2つの手数料体系の違いをどう考えるか
純粋な手数料の金額だけを比べると、楽天証券のゼロコースが0円に対して松井証券は50万円を超えると手数料が発生するため、取引量が多い場合は楽天証券のほうがコスト面で有利です。
一方、松井証券のボックスレートは注文が東証に直接通る通常の取引であるのに対し、楽天証券のゼロコースはRクロス®を経由するという仕組みの違いがあります。長期投資や少額の取引がメインであれば気にならないレベルですが、板を意識しながら細かく売買するトレーダーにとっては注文の経路が気になる場合もあります。
1日の取引合計が50万円以内に収まるのであれば、松井証券もボックスレートで手数料0円です。少額からコツコツ取引するスタイルであれば松井証券でもコストはかかりません。
手数料以外の違いも見ておく
松井証券の強み
投資情報ツールが充実していて、四季報の閲覧やスクリーニング機能を無料で利用できます。一日信用取引は手数料・金利ともに無料で、デイトレードに特化したコスト面で有利な取引ができます。カスタマーサポートの評判が高く、電話がつながりやすいと定評があります。
楽天証券の強み
楽天ポイントで投資信託を購入できたり、楽天カードで積立設定ができたりと、楽天経済圏との連携が強みです。楽天銀行との連携(マネーブリッジ)で普通預金の金利が優遇される特典もあります。取り扱い銘柄数や投資信託のラインナップも豊富で、国内株・米国株・投資信託・NISA・iDeCoまで幅広く一つの口座で管理できます。
どちらが向いているか:ケース別比較
| こんな人・こんな場合 | 松井証券 | 楽天証券 |
|---|---|---|
| 1日の取引合計が50万円以内 | ◎ 手数料0円 | ◎ 手数料0円 |
| 1日の取引合計が50万円超 | △ 手数料発生 | ◎ 手数料0円 |
| 東証に直接注文を出したい | ◎ | △ Rクロス®経由(超割コースなら◎) |
| 出来高の少ない小型株を取引したい | ◎ | △ 約定しにくい可能性あり(超割コースなら◎) |
| 信用取引を長期で使いたい | ◎ 金利が低め | △ ゼロコースは金利が高め |
| 楽天ポイントを活用したい | - | ◎ |
| 楽天カードで投資信託を積み立てたい | - | ◎ |
| 楽天経済圏をすでに使っている | - | ◎ |
| サポートや情報ツールを重視したい | ◎ | ○ |
| NISAで長期投資をしたい | ○ | ◎ |
まとめ
手数料の金額だけで比較すると、取引量が多い場合は楽天証券のゼロコースが有利です。一方、松井証券のボックスレートは1日50万円以内なら0円で、注文が東証に直接通る通常の取引という点では仕組みがシンプルです。
どちらが向いているかは取引スタイルや重視するポイントによって変わります。楽天経済圏をすでに活用しているなら楽天証券との相性が良く、サポートの手厚さや情報ツールを重視するなら松井証券が向いています。両方の口座を開設して使い分けるという選択肢もあります。
それぞれの証券会社の詳細はこちらの記事で解説しています。
※本記事は情報提供を目的としています。手数料・サービス内容は変更される場合があります。最新情報は各証券会社の公式サイトでご確認ください。投資には元本割れのリスクがあります。投資の判断はご自身でお願いします。
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